oucaの田村です。
桜も見頃の季節になりましたね。この季節、敏感肌の私にとってかなりつらい季節です。
それはなぜか。丁度1月後半から春先にかけて出てくる全身の痒みがあるからです。
昨年は夏からケアを行い、ひどくなく過ごせたのですが、今年は数年ぶりに、衣服のすべてが気持ちが悪く、外出困難になりました...。根拠なく、薬嫌いの私ですが、さすがに予定をキャンセルするほどになってきたので、薬をやむなく飲み始めました。ですので、今は平気です。
血液検査をしても何も出てこない状態なので、病院では色んな診断名を付けられていましたが、最近になってようやくこの症状が感覚過敏症であることが分かりました。その中でも私に顕著なのは触覚だそうです。触覚過敏症と言います。
確かに振り返ると小さいころから触覚過敏症の症状はあり、今でも感覚過敏による子供のころからのマイルールがあるのです。
とどのつまり、oucaが肌触りにこだわるのには、私の感覚に対する経験が色濃く反映されているということです。
oucaマガジン3月号のテーマは、この「肌ざわりの良さ・心地良さへのこだわり」×ブラジャーの開発物語をお話したいと思います。
▼サクラさんとの出会い
今から3年半前、2019年連日のように真夏日を更新している8月25日のことでした。
Facebookメッセンジャーを開くと、30代後半の女性のサクラさんから一通のメッセージが届いていました。
(サクラさん)
「ベビーパウダーを肌にはたいてから下着を着るようにしています。じゃないと夏場は下着を着るのが難しいです」
私も敏感肌だったので、この言葉にとても共感しました。
8月に「ブラジャーに関するアンケート」をとらせていただいた際、直接ご連絡いただいた方が、サクラさんでした。難病が徐々に進行し、2019年頃から車椅子生活に。それまでは民間会社の総務に15年務めており、オーストラリアなど海外にもよく行かれていたそうです。現在はご実家で療養しています。写真はサクラ家の愛犬アイボ。
全く知り合いでもない私からのアンケートに答えていただけたことが、とても嬉しかったことを覚えています。
私がこのアンケートを実施した理由は、障がいで体が思うように動かせずブラジャーのホックをとれない友人がいたこともあり、同じように悩んでいる方々の声を聞いて、解決していきたいと思っていたからでした。
サクラさんからは、「筋力が弱いこともあってブラジャーのホックを外しにくいので、付けたり外したりしやすいものに変えたい。あと、肌ざわりが良いものが欲しい」という声をいただきました。それからサクラさんと個別でメッセージをやりとりさせていただくようになったのです。
さらにお話を聞いていくと、サクラさんは「20代のころから下着に興味があり、色んなメーカーのものを試したが体に合わず、下着ジプシー中で…。」とのこと。
これまでオーガニック系のブラジャーを購入されていたり、肌に優しいブラジャーを作るクラウドファンディングプロジェクトを支援してきたことを知りました。
締め付けがなく、自然体でいられて肌に優しいものを求めてきたものの、2〜3回着たら肌トラブルで着なくなる。。。満足を得られるものに出会えなかったお話を聞き、「まず、サクラさんが満足いくものを作ろう!」と決意しました。
▼二転三転のプロセスで、気づきと学びを共にする
そう意気込んで実際にブラジャーの制作をスタート。さすが下着ジプシーのサクラさん(笑)、たくさんの情報をお持ちで、連日お互いにもっている情報を交換し合いました。その中で、2019年9月24日、まず、生地についてサクラさんからこんな意見がありました。
「ウールの下着を買ったけど、縫製がダメで、調子がいい時は痒くないんですけど、生理前とか痒くなっちゃったときは、裏返しにして着ればいいんだとひらめいて、そのように着たら、すっごく良かった!」
「裏表着る事できたら、かゆい族のかなりの皆さんが救出できるような気がします!!」
この言葉で、
「まず被りタイプのブラジャーを作ろう!そうすれば縫製を工夫すれば、裏表にして着れる!!」と考え、早速作りました。
しかし、サクラさんからは
被り物のデザインも持ってはいるがあまり着ていない。とのこと。
理由は
①着にくい (私の持ってるのはシルクで伸びない)
②肩紐がくいこむ
③肩紐が下がる
④紐が細すぎて肩こりしちゃう
⑤バストメイクできない
そして、その言葉を受けさらに改良を加えます。
被りと前ホックが融合したブラジャーに変化します。
約1週間後の10月2日、大阪で片まひの友人のAさんに試着してもらいました。
彼女もブラの悩みを持つ女性でした。
この時に判明したのが、Aさんは片腕のみ動かして着脱する為、生地が想定以上に伸び、それに何度も耐え得る素材にしないといけないことでした。
サクラさんに結果を報告。
「デザインが20年前に流行ったアメリカ製のブラを思い出した!かわいい!」
と嬉しいお言葉をいただきました。
問題は機能面。サクラさんもAさんも共通して
・肩ひもがくるくるなると直せない
・被りタイプだと腕の上げ下げが、実はしんどい
・前ホックのものが良いけど上手くつけられない
とのこと。
今回の試着では問題点ばかりが浮き彫りになり、モヤモヤした感情と不安がよぎりました。そんな中、助けてくれたのはサクラさんでした。
ふと送られてくる質問や、下着の話に想いを感じ、私は元気や勇気を貰っていたのです。
「パンティーは作る予定はないんですか?実は、車椅子に長く乗っているとパンティーラインが擦れて黒くなってしまうんです」
という連絡に、私も悩んでいたことだったので、強く共感しました。
これを機に、ブラよりも製作しやすいショーツにも着手し始めます。
下の写真は、人生で初めて作ったレースショーツ。なんとも不格好でひどい。(笑)
そんな折に、サクラさんから素敵なプレゼントが届きます。
薔薇で染めたヘンプのショーツでした。
これは締め付けが無く不満なく履けるショーツと伺い、私も早速着しました。確かに肌に良いタイプのものであるものの、当時の私には履きなれない、フレアが入ったタングタイプのもので、おしりがスースーするのです。もじもじしながら履いた日が懐かしい…(笑)
その後、慣れて、履きすぎて伸びきりましたが、今でも大事に残しています。
▼2人3脚で1つずつカタチに
サクラさんの地元に出張で行く機会がある時は対面でお話し、リサーチしてくださった情報を取り入れる。そうして、「伸縮性と耐久性を確保しながら肌ざわりの良いものにするには…」と製作・改良を重ねていくことになります。
(サクラさん)
「マグネットタイプのホックはどうでしょう?海外のマタニティーのブラジャーではそういうものもあるんですが…」
たしかにマグネットのホックなら取り外しやすいと思ったのですが、詳しく調べてみると日本ではペースメーカーに反応してしまうなどの事情もあり、マグネットタイプのホックのブラジャーが少なく、マグネットの種類もほとんどないことがわかりました。ということで、被りタイプのものと、フロントホックのものを並行して作っていくことになりました。
それから2ヶ月後、12月22日にサクラさんの地元で会い、新しいホックのタイプを試着してもらったところ、「これは良い!使えるかも!」と機能的にクリアしたのですが、大きいホックだった為、肌に当たってトラブルになる...横方向の力に弱いという欠点が...。
そうして、また考え直すことになりました。
ただ、同時に開発していた、キャミソールとショーツに関しては「柔らかくて気持ちいい!これなら私も着られます」とOKをいただき、手売りでスタートしていくことにしました。
▼インクルーシブデザインへの葛藤
ここで大きな壁が立ちはだかりました。
2020年の1月からサクラさんが北欧留学にいくことになり、実際に会うことが難しくなりました。
まぁ荷物を送ればいいや!という安易な考えでいたのですが、世界中がコロナ禍に突入します。
その中で、サクラさんが体調不良に。
コロナもありすぐ帰国することも難しく、メンタル的にもたいへん厳しい状態だったようです。6月ごろ無事に帰国され、安堵したことを今でも覚えています。
しかし、桜さんの体調は戻らず「寝たきりで、声が出ない」と連絡がありました。
どれほどの心労だろうかと、私の想像には及ばずもどかしさを感じました。
そういった状態なのでブラジャー制作はお休みしましたが、他愛ないやり取りはずっと続いていました。
開発していたsakaeネイルのチップ(点字ナイルチップ)を購入していただいたので7月に送付。
9月にサクラさんの地元に伺った際に、完成したショーツをお渡ししました。この頃には現在のショーツとほぼ同じ形になっています。
その後、少しずつブラジャー開発を再開し、サクラさんがリサーチしてくださった情報やアイデアをもとに背面クロスタイプのブラジャーを制作。12月に送付して試着していただいたところ、「ブラのデザインは良いですが、手の力が弱いので着にくい」という感想でした。私もクロスは無いなぁと、デザインを白紙に戻します。
この頃、サクラさんは体重が激減していたと後になって知りました。しんどい中、頑張って試着して下さったんだろうと思うと、胸がいっぱいになりました。
その後、2021年に入ってからサクラさんが体調が悪化し5月から入院することになってしまいます。
6月、7月と連絡をしましたが、連絡が取れなくなります。
インクルーシブデザインはリードユーザーさんと一緒に作らないと、カタチにはしていけないことを痛感しましたし、葛藤する日々を過ごしていました。何より心配で、繋がりある人に桜さんのことを聞いて回りましたが、何も掴めず...。
心配になり過ぎた私は思い切ってサクラさんのご両親に手紙を書くことにしたのです。1,2度挨拶程度しかお話していなかったので、なかなか文章が書けず何枚も便箋を捨てました。
手紙にした理由は、ピコピコ送られてくるスマホでのやり取りより、もしサクラさんの手に渡った時、自分のタイミングで落ち着いて見られる方が良いと思ったからです。
すると、1週間ほど経った頃、サクラさんから直筆のお手紙が…!
「気持ちのこもったお手紙ありがとうございます。中略...今は療養中のため、今は誰とも会えていません」
一生懸命書いて下さったことがわかるお便りに涙が溢れました。
▼コツコツ花を育てるように、プロダクトを生み出す
さくらさんに喜んでもらいたいし、心地よく生きてほしいという想いから始まったブラジャーの開発は、一旦ストップしました。
体調が悪くなる、心がしんどくなるこれは誰しもあることです。無理に開発を進めるのではなく、柔軟に形を変え共に生きることに意味があり、それがoucaらしいと判断しました。
2021年の秋にショーツとキャミソールの撮影をし、EC販売をスタート。実はこのレースは、サクラさんにピックアップしていただいたもの。そしてoucaのポストカードも制作し、サクラさんにお送りしました。
すると、12月に長文の連絡が。
「このように関わってくださるのはゆきさんだけなので嬉しい。早く体調よくなりたいです」と。
本当に本当に嬉しかったです。
その頃から、サクラさんからの返事が増えた気がしました。
最近では、おすすめの漫画やドラマを見つけては送りあって、2人でムフムフしています!
・・・
ここで一旦サクラさんとのお話しは終わります。
結末があるような内容ではなかったですが、ブラの開発の原点にはサクラさんとの出会いがありました。
サクラさんは私よりお姉さんで、知識欲が強く面白い話をよくしてくれます。
そして、生きていく上で良くも悪くも考えてしまう自分に対していつも真っ直ぐな誠実さを持つサクラさんに私はとても惹かれているのです。
出会えてよかったと心底思うお姉さんなので、また桜さんからの連絡が途絶えたら私はしつこく追い回すことでしょう。
【キャミソール・ショーツの感想】
・肌あたりが柔らかく、力が無くても履けて楽です。レースが素敵なのでテンション上がる!
・今までストレス少ないものを選んでいたつもりでしたが、oucaのを身に着けていて今までのも身体に合ってなかったんだなって気が付きました。
・友達が乳がんを克服しました。もっと人生をoucaしてほしいから、私とお揃いでプレゼントします!!
▼コツコツ着実に1つ1つを、前へ
2022年に入ってからは、minamoを誕生させることに全力投球。クラウドファンディングと郵送が終わった11月頃、ブラジャー開発も脳性まひの友人に試着してもらいながら、ゆっくりと進めています。いつか、世に出せるように、と思いながら。
oucaが大切にしたいことは、まず、目の前の1人、あなたが心地良さを感じ、喜ぶものを作ること。それがみんなにとっての価値になっていくからです。
今回は、下着開発が始まる「出会い」についてお話しさせていただきました。
minamoを作るときも1年かかりましたが、oucaのものづくりはこのように二点三転、七転八起で進めています。
下着開発のお話は来月も続きます。次は皮膚とインナーのお話です。
そうそう!
ブラへの開発は今も続けています。夏にハーフブラを発表予定!お楽しみに!
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